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脳死・臓器移植関連


by miya-neta2

生存率5年70% 病腎移植36例 広島大教授調査「検討に値する」

健康|生活・健康|Sankei WEB


 宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師らによる病腎移植問題で、36例の病腎移植の対象患者34人が5年間生存した割合(生存率)が70%であることが、広島大学の難波紘二名誉教授(血液病理学)の調査で分かった。生体腎移植、死体腎移植を受けた患者の生存率(日本移植学会調べ)と比べると、やや低いが、生着率は死体腎に近く、難波教授は「病腎利用の可能性について今後検討するに値する結果だ」と評価している。

 病腎移植の成否を総体的に分析したデータが示されたのは初めて。20日に松山市で開かれるシンポジウムで発表される。

 難波教授は、病腎移植を行った3病院から病理診断データなどの提供を受け分析。担当医の聞き取りも行い、移植患者の生存率などを調べた。

 調査対象とした36例の内訳は、市立宇和島病院の19件▽宇和島徳洲会病院の11件▽呉共済病院(広島県呉市)の6件。市立宇和島病院は病腎移植件数をカルテが現存する14件と公表しているが、今回の調査は病理診断データなどをもとに19件を対象とした。病腎移植を2度受けた患者が2人含まれる。

 病腎の疾患別内訳は、腎臓がん8件、ネフローゼ症候群7件、尿管がん6件、腎動脈瘤6件、尿管狭窄5件、血管筋脂肪腫2件、海綿状血管腫1件、腎石灰化嚢胞1件。

 患者が初めて受ける移植に病腎が用いられたのは10件、2度目が16件、3度目7件、4度目2件、不明1件だった。

 初回移植患者の生存率を調べたところ、1年100%、5年66.6%、10年50%、15年33.3%。2度目以降を含めた病腎移植患者全体の生存率は、1年96.3%、5年70%、10年27.2%、15年11.1%。

 初回移植患者の移植腎生着率は、1年75%、5年60%、10年50%、15年33.3%で、死体腎の生着率とほぼ同じだった。

 腎がんの病腎を移植された8件のうち、がんが再発転移した例はなかったが、尿管がんで肺転移の可能性が否定しきれない症例が1例あった。

 長期の生存率では病腎移植患者の数値が劣るが、病腎移植患者は死体腎などに比べ、高齢であったり健康状態の悪い人が多かったという。難波名誉教授は「病腎を初めから移植した場合、死体腎移植と遜色(そんしょく)ないように思う。患者が摘出を望んだ病腎であれば、活用のための臨床試験を本格検討するべきだ」と話している。



新たな医療、価値検証を


 今回の調査結果は、病腎移植の症例数が生体腎や死体腎に比べてかなり少ないだけに、同列に比較するのは難しい面もある。だが、病腎移植患者の年齢や移植回数を考慮すれば、それなりの成績といえそうだ。

 病腎移植問題で是非が問われたのは、ドナーから摘出する必要があったかどうか▽移植された患者への影響▽移植機会の公平性-の3点だった。

 個々の移植の手続き面については、病院の調査委員会や厚生労働省の調査班が調査を進めている。だが、病腎移植を新たな医療ととらえ、その価値を検証する作業は行われていない。

 泌尿器科の医療現場では、部分切除で済むごく初期の腎臓がんなどの患者であっても「摘出してほしいという声が確かにある」と、複数の医師が証言している。ある医師は「年間1000個ぐらいは移植に使える病腎が出ている」と推計する。

 臓器移植は、患者以外の第三者の身体を必要とする特殊な医療だ。そのため、健康な人の身体を傷つける生体移植ではなく、亡くなった人の善意をもとにその臓器を生かす死体移植が基本であるべきだ。

 だが「病腎でも助かる人がいるなら」と、摘出後の提供を了承するドナーがいるなら、そのささやかな善意を無駄にしない努力も必要である。さらに医学的な検証を進めるべきだろう。(石毛紀行)

(2007/01/20 02:12)
by miya-neta2 | 2007-01-20 02:12 | 脳死・臓器移植