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脳死・臓器移植関連


by miya-neta2

小児の脳死判定「経験を積めば高い確率で可能」

キャリアブレイン

 臓器移植法改正をめぐる議論が国会でも進む中、臓器移植法改正案の「A案」を支持する議員らが6月3日に開いた勉強会で、米国の小児集中治療専門医の資格を持つ、静岡県立こども病院の植田育也・小児集中治療センター長は、米国での小児の脳死判定について紹介し、「経験を積めば、高い確率で小児の脳死の診断が可能」と述べた。また植田センター長は、小児の脳死判定など小児医療の充実のためには、小児集中治療室(PICU)の整備や専門医の養成が重要だと強調した。
 植田氏は1994-98年、米国の病院で小児医療の経験を積み、同国の小児集中治療専門医の資格を取得。脳死判定や子どもの家族への説明、看取り、「臓器提供への送り出し」なども経験したという。

 勉強会で植田氏は、日本社会では「小児の脳死判定は難しいのではないか」「脳死になった小児でも回復するのではないか」「虐待された小児から臓器が提供されてしまうのではないか」などの不安があると指摘。その上で、米国のPICUでの経験などを踏まえ、こうした「不安」への意見を述べた。

 小児の脳死判定の難しさについては、米国では、▽生後1週間から2か月未満の乳児では2回の診察所見と脳波測定を48時間空けて実施▽2か月以上1歳未満の乳児では2回の診察所見と脳波測定を24時間空けて実施▽1歳以上では2回の診察所見を12時間空けて実施―など、「若年者ほど慎重に規定された判定基準がある」と強調。また、脳幹機能の消失など脳死判定にかかわる検査は通常の診察の中で行われ、「(脳死判定に当たって)特別な検査をするというわけではなく、あくまで一般的な診察、普通に行う検査の集合体だ」と説明した。その上で、「経験を積めば、高い確率で小児の脳死の診断が可能」と述べた。
 
 脳死になった小児が回復する可能性については、脳死になると自発呼吸ができなくなるため、人工呼吸器につないで呼吸を維持することになるが、やがては心停止に至ると指摘。ただ、年齢の低い小児ほど、脳死になってから実際に心臓が止まるまでの時間は長い傾向があり、「小児だと通常、1-2週間くらいは心臓が動き続ける」「新生児だと数か月、場合によっては数年以上にわたることもある」と述べた。
 さらに、「濃厚な延命治療」を行うと、この期間は延長し、「何年もの後に、わずかに自発呼吸が出てくるような患者もいるという報告が実際にある」と指摘。「脳死を診断した医師のエラーなのか。脳死判定基準自体にわずかにエラーがあるのか、これは難しいところだ」とした。ただ、これはあくまで「ほんのわずかな容体変化」で、「元の通りに戻るということでは決してない」と強調。むしろ、延命治療を続けることで、患者の体に大きな負担を掛けることは「(米国では)倫理的ではないと思われている」と指摘した。
 
 被虐待児からの臓器提供のおそれについては、「虐待診療が日本で未熟だということ。専門医が診れば、初診の時点で虐待を疑うことができる」と指摘。まず、被虐待児の診療や社会的措置を「しっかりするべき」と述べ、小児の脳死問題とは切り離して検討すべき問題だと強調した。

■PICUの整備など課題
 植田氏はまた、日本で小児の臓器移植を行う上での問題点も指摘した。
 まず、日本には小児の脳死判定に携わった経験のある小児科医がほとんどおらず、日本の小児の死亡の6-7割は、小児の看取りを年間1、2件しか扱っていない「小規模」な病院で行われていると指摘。日本の小児科医の多くが、「脳死判定だけでなく、看取りも不慣れだ」との見方を示した。また、日本ではPICUの整備が進んでおらず、小児の救命率が先進国中で米国に次いで低いと指摘。「こうした問題に対する答えが見えないというところから、(小児の脳死に対する)不安が来ているのではないか」と述べた。
 また、小児の臓器提供を進める場合、「臓器提供をした子どもの親にとっても、臓器提供を後々まで最良の選択だったと思ってもらえるような医療をわたしたちは提供しなければならない」と強調。そのためには、▽脳死となった小児の体がどのように衰え、心停止に至るのかなど、小児がたどる「将来」を的確に話せること▽臓器提供について中立な立場で話せること▽小児の看取りの医療ができること▽被虐待児の診療ができること―が必要だと指摘。具体的には、PICUの整備や専門医の養成を進め、患者の集約化を図ることが必要だと述べ、「法案整備だけでは不十分」と強調した。

更新:2009/06/04 13:15   キャリアブレイン
by miya-neta2 | 2009-06-04 13:15 | 脳死・臓器移植